Tenon囊下麻酔により眼球穿孔を生じた1症例

摘要

背景：局所麻酔法として鈍針によるTenon囊下麻酔は，手技が容易で合併症も少ないため広く行われている.今回，Tenon 囊下針で眼球穿孔をきたした症例を経験したので報告する.症例：72歳，男性.左眼特発性黄斑円孔にて近医より紹介され広 島大学病院眼科を受診した.右眼は弱視で，初診時視力手動弁（矯正不能)，左眼視力0.1(0.4)であった.両眼の白内障と左 眼の黄斑円孔があり，2017年12月14日に右眼の水晶体乳化吸引術を行った.18日に左眼の水晶体乳化吸引術および硝子体手 術を予定した.所見：鼻下側の結膜切開中抵抗が強かったが，同部よりTenon囊下針を挿入していったところ抵抗が急になく なったため穿孔を疑った.術中眼底には強膜および網膜穿孔創があり，硝子体切除術とシリコーンオイル注入を行った.術後2 週のOCTで黄斑円孔の閉鎖が確認できた.網膜剝離などの合併症もなぐ術後4カ月でシリコーンオイル抜去，眼内レンズ挿 入術（囊外固定）を行い，最終視力左0.5 (0.9)になった.結論：本例は高度近視や眼既往症もなかつたが，安全性の高い鈍針 によるTenon囊下麻酔であつても穿孔などの重篤な合併症を引き起こす可能性がある.