5) 前立腺がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の開発

摘要

前立腺がんは他がん腫に比較して免疫原性 が低く，免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor ； ICI)単剤では十分な治療効果を示すことはできなかった.ICI単剤療法が治療効果不十分であった理由として，前立腺がんは，①腫瘍微小環境(tumor microenvironment ；TME)が抗腫瘍活性をもつ腫瘍浸潤免疫細胞にとって不利な環境であること，②他のがん腫に比べてCD8陽性T細胞が少ないこと，③他のがん腫に比べて遺伝子変異量(tumor mutational burden ； TMB)が少ないこと,④制御性T細胞が腫瘍や末梢血内で豊富であること， ⑤TMEにおける腫瘍関連抗原やネオアンチゲンが少ないこと，⑥進行性前立腺がんではPD-L1 (programmed death-ligand 1)の発現が減っていることなどがあげられる.