宇宙環境を利用した微小フォトニクス材料の創製

摘要

1957年世界最初の人工衛星スプートニク1号が打ち上げられてからすでに46年が経つ．その間，惑星探査機打上げや有人飛行打上げなどがおこなわれてきた．近年では，民間人の宇宙旅行も現実化した．以前には，遠い存在に考えられていた宇宙も身近になりつつあるのだと実感する．近年，宇宙環境を利用した材料の創製に関する研究が多くの期待をもたれ行われている．宇宙環境では，無浮力·無沈降，熱対流の減少，重力に起因する静水圧力の減少，浮遊効果などがあり，これらの効果が著しく現れるのは流体においてである．我々はガラスの液一液分相現象を利用した微小フォトニクス材料についての研究をおこなっている．ガラスの液一液分相現象は，液相線温度以上で融体状ガラスが2つ以上の融体状ガラスに相分離する現象であり，アルカリ土類ボレート系ヤアルカリ土類シリケート系などにみられる．しかしながら，この現象は液相中における物質移動を伴うため，固相で進行する分相に比べて重力の影響を受けやすい．組成によっては母相と分相粒がその重さの差により上下に2相分離してしまうものもある．そこで，我々は宇宙環境を利用した方がガラスの液一液分相の利用に有利であると考え，また，宇宙環境がガラスの分相現象に与える影響に関する知見を得るために，微小重力環境下におけるガラスの液一液分相に関する研究をおこなってきた．以下にその詳細を紹介する．