進化へのベンガラロード

摘要

エレクトロニクス産業は20世紀に結実した工業技術の一大成果であるが，なかでも磁気記録技術の進歩発展は顕著であった．即ち，磁気テープ，磁気ディスク，磁気カードなどの磁気メディアの開発はオーデオやビデオ並びにパソコンや各種磁気カードシステムの開発を促進し，今日の情報化社会をもたらした．1980年代は電子機器の高性能化，オーデオやビデオ機器の軽薄短小化と磁気テープのカセット化が実現したことにより，磁性ベンガラの需要増大に拍車を掛けた．1990年代にはコンピュータのPC化が普及し，情報処理の高速化や高容量化により，アナログからデジタルへと信号処理システムの開発が進展した．これ等に用いる信号記録システムも磁気記録方式，光記録方式．その他の種々の方式が開発されたが，普及したのは前記2つの方式であった．中でも磁気記録メディアは，M．Camrasにより塗布型磁気テープが発明された1947年以来の長い実績に培われた信頼性に基づいて，バンキング，ショッピング，運輸，交通など日常生活の利便性を支援するあらゆる磁気システムにおいて普及した．これ等の磁気メディアを支えてきたのは磁性酸化鉄粉，即ち，磁性ベンガラであった．このように20世紀においてベンガラは大きな進化を遂げたのであった．