イオン性液体中での有機電解反応

摘要

反応溶媒は基質を溶解させ，反応を制御する役割を担っている．有機化合物の多くが水に不溶なため有機反応には有機溶媒が用いられてきた．また，生成物の分離精製にも有機溶媒は多用されている．環境への配慮から有機溶媒の回収が今日義務付けられている．このような背景から，近年，有機溶媒の使用をできるだけ低減し，無溶媒系を指向した有機合成プロセスの開発が盛んになってきた.有機電解合成にも有機溶媒が多用されてきた．また，陽極メトキシ化やアセトキシ化のように溶媒が反応剤を兼ねる場合も多い．水は理想的な電解溶媒であり，現在，企業化されている有機電解プロセスの大部分は水系電解である．しかしながら，水系では有機物の溶解性や水の酸化還元分解との競合などから適用範囲が制限される．有機溶媒は基質である有機化合物や支持電解質を溶解させる媒体として重要であるが，環境面や安全性に加え，電位窓を狭くする負の要因としても働く．このため，支持塩を必要ことしか-SPE電解合成や電極触媒を利用した新しい気相電解が開発されてきた．