低リスク肺塞栓症患者の同定に簡易版PESIスコアは我が国でも有用か？?COMMAND VTE Registryからの知見?

摘要

背景:簡易版PESIスコアは肺塞栓症患者の30日死亡の予測に有用であると報告されており，これは早期退院や外来治療が可能な低リスク患者の同定に役立つことが考えられる.しかしながら，その様な治療方針の判断には，死亡のみならず，それ以外の臨床イベントのリスクに基づいて決定されるべきである.方法:COMMAND VTE Registryは，日本の29施設において2010年1月から2014年8月の期間に，急性の症候性の静脈血栓塞栓症(VTE)と診断された連続3027症例を登録した多施設共同観察研究である.本解析では，1715例の肺塞栓症患者を対象とした.それぞれの患者の簡易版PESIスコアを算出し，スコア0点の患者と1点以上の患者の二群間で，30日死亡，VTE再発，ISTH大出血を比較した.結果:スコア0点の患者は383例(22%)認め，全患者の中で30日以内に死亡した患者は110例(6.4%)であった.30日の累積死亡率は，スコア0点の患者のほうが，スコア1点以上の患者より有意に低かった(0.5% vs.8.1%,log rank P<0.001).—方で，30日の累積VTE再発率は，スコア0点とスコア1点以上の患者群で，統計学的な有意差を認めなかった（1.3% vs.2.8%, log rank P=0.11).30日の累積大出血率は，スコア0点の患者のほうが，スコア1点以上の患者より有意に低かった（0.5% vs.8.1%,log rank P<0.001).結論:簡易版PESIスコア0点の患者は，30日の累積死亡率，VTE再発率，および大出血率は，相応に低いイベン卜率であった.我が国の実臨床でも簡易版PESIスコアは，早期退院や外来治療に適する患者の同定に有用と考えられた.