Co-sputterによるβ-FeSi_2薄膜の組成と光学特性の制御に関する研究

摘要

近年，材料の表面のナノ構造を設計することにより熱源の輻射スぺクトルを制御し，効率よくエネルギーを取り出す技術が注目されている。例えば，太陽光を集光して加熱された物体や溶鉱炉周辺の高温の物体から放射される赤外線を光起電力素子で電気に変換する熱光起電力（Thermophotovoltaic, TPV）発電システムである。これらの熱源は黒体放射に近い幅広い波長域の光を放射するのに対して，光起電力素子は波長2μm付近の光しか効率よく電気に変換できない。発電に利用できない波長の光は，熱源のエネルギーの損失につながるだけでなく，光起電力素子の周辺を加熱して光電変換効率の低下にもつながる。そこで，熱源と光起電力素子の間にバンドパスフィルター，つまり波長選択透過膜を用いると，発電用の2μm付近の波長域の輻射だけを取り出すことができるので，システム全体の効率を高めることができる。バンドパスフィルターは光学多層膜によって実現されているが，現在多層膜に用いられている多くの材料は，屈折率が3未満であるため，赤外域で所望の特性を得るには膜厚や層の数を増やさなければならない。そこで，我々は赤外域で高い屈折率を持つβ-FeSi_2に着目した。