固体高分子形燃料電池用電解質膜の現状

摘要

高分子固体電解質形燃料電池（Polymer Electrolyte Fuel Cell, PEFC）は，エネファームに代表される家庭用燃料電池として，また燃料電池自動車（Fuel Cell Vehicle, FCV）に代表される移動体電源として期待されている。しかし，エネファームにしてもFCVにしても普及拡大には，未だ多くの課題が残されている。新エネルギー·産業技術総合開発機構（New Energy and Industrial Technology Development Organization, NEDO）の2018年公開の燃料電池·水素技術開発ロードマップに普及目標とそれに対応する技術課題の詳細が説明されている。FCVにおいては，東京オリンピック開催予定であった本年2020年頃には乗用車の累計普及台数が4万台程度に設定されていたが，2019年の統計では国内保有台数が3600台程度であったことや，COVID-19の影響からすると初期目標の達成はかなり厳しい状況にある。一方，中国では日本を上回る6000台程度（2019年）に到達していることから，世界的に見ると本国がFCVの普及を牽引すると言うよりは，世界が後押しするような時代に入ってきている。