(その14)金属銅と木材劣化水木金土

摘要

本稿では銅金物などと木材の劣化について紹介 してみたい。キーワードは水木金土。といっても 1週間の曜日の話ではなく,木材保存の話。木造建築の銅金物で頭に浮かぶのは，寺社 建築の端隠しや欄干の 擬宝珠など。現代では 装飾具だが，かつては 実用性もあったはず だ。古の銅金物に少し 思いを馳せてみたい。水分は，木材の劣化 に最も大きく関与して いる因子である。優れ た防腐防蟻剤や注入技 術のない時代には，木 材を濡らさないこと，すなわち防水が唯一の劣化対策だったと考えられ る。雨仕舞は効果的な防水の工夫だが，どうして も雨がかりが避けられない箇所も出てくるし，地 面からの水分対策も必要である。そのような箇所 の防水には，非透水性のカバーを付けるのが有効 であろう。プラスチックのない時代，水から木を 保護する非透水性の材料といえば金属で，中でも 耐食性や成型性に優れた銅系金属が重宝され，吸 水しやすい木口端面を保護するため，端隱しや擬 宝珠などの金物が考案されたのであろう。文献に よると，建築用の銅金物の歴史は中国の殷前期に まで遡り，屋根瓦より古いらしい。