生活習慣とED

摘要

生活習慣には,食事,飲酒，喫煙，運動,休養,睡眠などが含まれ,これらの長年にわたる習慣が適切でないことにより，いわゆる生活習慣病と呼ばれる病態が発症してくる.食事に関する生活習慣病には,糖尿病，肥満,胃がん,大腸がん,高血圧,動脈硬化，心筋梗塞，高脂血症,歯周病などがあげられる.飲酒は,脂肪肝，アルコール 性肝炎,アルコール依存症，喫煙では肺がん，慢性気管支炎,肺気腫,運動に関しては肥満,糖尿病,高脂血症などがある.さらに休養がとれないと過労死などのリスクや,不眠症といった問題もあり，普段の生活習慣は健康にとってきわめて重要である.本邦において，ウェスト周囲径が基準以上で，かつ血圧?血糖?脂質のうち2つ以上が基準値以上になるとメタボリック症候群と診断される.メタボリック症候群の状況になると,脳血管障害,虚血性心疾患といった重篤な疾患をひき起こす危険性が高くなる.これら致命的にもなる疾患に至る過程として，不適切な生活習慣がいくつも重なり,経時的に多彩な病態が生じ，さらに連鎖しながらさまざまな病変を発症してしまうメタボリックドミノという概念も提示されている.「人は血管とともに老いる(W. Osler)」ともいわれるが,これらの病態の重要な病因として動脈硬化などの血管病変は重要な要因の一つである.男性性機能障害は,①性欲障害,②勃起障害(ED),③射精障害，④オルガズム障害に分類される.この中で特にEDは有病者や受診者の数も多く，臨床的に重要な病変である.ED診療ガイドライン2)においては,EDのリスクファクターとして,糖尿病,肥満,心血管疾患,高血圧，喫煙といった生活習慣病やメタボリック症候群と関連した項目があげられており,EDと生活習慣の関連性は重要である.本稿では,EDと生活習慣に関連した病態との関連性につき概説する.