身体活動と泌尿器がん罹患との関連

摘要

身体活動とがんとの関連について,これまでに多くの疫学研究から報告がなされている.世界がん研究基金の報告では,身体活動は結腸がんのリスクを下げることが「確実」であり，乳がんおよび子宮体がんのリスクを下げることは「ほぼ確実」と評価されている.身体活動ががんのリスクを下げるメカニズムは,インスリン抵抗性の改善，慢性炎症の低下，免疫応答の活性化,およびホルモンレベルの正常化などが報告されており,これらの要因が,複合的にがんの発生に共通して関与し，リスクの低下につながっているのではないかと考えられている.疫学的知見について，144万人のプール解析を実施した12の前向きコホート研究のメタアナリシスでは,余暇の身体活動レベルが高い対象者は,全がんのリスクが約7%低いことが報告されており,泌尿器系のがんの中では,腎がんのリスクが23%,膀胱がんのリスクが13%低いという予防的な関連が示されている.しかしながら,このプール解析には,アジア人を対象にしたコホート研究は含まれていない.世界がん研究基金によると,腎がんや膀胱がん6）については,喫煙や肥満が主なリスク要因として報告されており,喫煙習慣や体格が異なるさまざまな対象集団で,身体活動と泌尿器がんとの関連を検討し,予防対策につながるエビデンスを積み重ねることが重要であると考えられる.ここでは,身体活動と腎がん?膀胱がんなどの泌尿器がん罹患との関連について,世界における疫学研究をまとめるとともに,日本人におけるエビデンスを紹介したい.