性腺機能低下症と男性不妊

摘要

男性不妊症の原因として性機能障害が増加し てきている.膛内射精障害や性欲低下などが主 な症状であることが,勃起障害(erectile dysfunction ；ED)を主とした一般的な中高年の性機能障害とは異なる.つまり糖尿病をはじめとする器質的なEDではなく環境的?心理的因子の関与が大きい.造精機能障害を伴っている男性不妊症例においては当然のことながら内分泌異常を呈する症例も多く,テストステロン(以下，T)低値も男性不妊症患者の性機能障害の病態に深くかかわっている.乏精子症であっても男性側の内分泌学的精査がなされずに妻側のみの不妊治療がなされることが多い現状に鑑みると,多くの低T症例が診断されないままとなっている可能性がある.低Tの是正により性機能障害のみならず造精機能障害の改善も認める症例も多く存在することから泌尿器科医による適切な対処が必要である.性機能障害,性腺機能低下症および低Tは密接に関連しているが同義ではない.本稿においては病態を考察する上でTを中心に解説させていただくが,適宜,性機能障害および性腺機能低下症という言葉を使用させていただく.