自動車の基盤技術としてのリサイクル技術の現状と展望

摘要

われわれの身の周りから出る膨大なごみの処理や，産業廃棄物の処分場の逼迫といった問題から，大量消費社会から脱却し，新しい循環型の社会構造の構築を目指して循環型社会基本法が制定されて久しい。 このような中で，容器包装リサイクル法や家電リサイクル法が導入されてきたが，使用済み自動車(ELV: End-of-Life Vehicles)に対しても2002年7月に自動車リサイクル法（正式には使用済み自動車の再資源化に関する法律）が成立し，2005年1月に施行された。 一方で，温暖化に代表される地球規模の環境問題がますます深刻になり，我々人類が緊急に解決すべき大きな課題となっている。 また，中国に代表されるアジア地域の急速な経済発展に伴う資源やエネルギー不足など，現代社会が抱える問題は極めて深刻なものがある。 このような大きな社会状況の変化は自動車のリサイクル問題にも様々な影響をもたらしている。 本稿では，自動車リサイクルの現状と課題を整理し，様々な社会状況が自動車リサイクルに与える影響に言及するとともに，今後予想される社会状況の変化とリサイクル技術の今後の課題についても議論したい。