経験と革新を組み合わせた「創意工夫」 - 日産の可変圧縮比エンジン「VCターボ」に与えられた技術

摘要

前号では世界初の量産可変圧縮比エンジン「VC（Variable Compression ratio）ターボ」の技術的概要を紹介したが、それぞれの動きに関与しあうリンク機構を実現するためには、設計のみならず生産に関しても工夫がらされている。小排気量の過給ガソリンエンジン、いわゆる“ダウンサイジングターボ”として燃費／出力向上を図るために与えられた技術とともに、「VCターボ」量産化への道程を見る。マルチリンク式可変圧縮比エンジンである「VCターボ」を実現するには、複雑なリンク機構の動きをコンピューターシミュレーションによって検討するなど、研究がスタートした約20年前から技術的進化を得たねばならかった。「たとえば、近年話題となったHCCI （Homogeneous-Charge Compression Ignition：予混合圧縮着火）が実現に向けて大きく進hだのは、制御技術の進化のおかげです。コンピューターシミュレーション技術の進化により、部品形状ひとつを決めるにしても、部品への応力の集中を防ぐ方法の検証にしても、過去に1年がかりで計算していたものが、半年ほどでできることもあります。