MT法による絶縁物の劣化診断·余寿命推定技術

摘要

受配電機器や変圧器のような高圧電気設備は電気エネルギーを工場や建物へ安定に供給する役目を負っている設備であり、水道、ガス、交通等のライフラインと密接に関わっている。高度成長の時代では、工場やビルの新設、住宅開発、社会インフラの整備による電力需要の増大に伴い、大容量化、性能·機能向上を優先した電気設備の建設·拡充が実施され、設備の世代交代が行われる状況にあった。一方、現代のような低成長の時代では、第1図に示すように電力需要の急激な増加は見込めず、電気設備の更新頻度が低下し既存設備の高齢化が進むため、設備の保全、長期にわたる信頼性の確保に強い関心が寄せられることになる。さらに、生産拠点や設備の統廃合·集約化や環境問題に対する対応から設備投資の抑制や固定費削減が必須となり、適切な更新時期の判定が可能な余寿命推定技術が望まれている。回転機、変圧器、高圧ケーブルについては劣化メカニズムや評価方法が活発に研究され、各種の余寿命推定技術が提案されているが、受配電機器に対する有効な技術はないのが現状である。本稿では、当社が開発し実用化している受配電機器絶縁物の劣化診断·余寿命推定技術について述べる。劣化診断精度の向上、余寿命推定手法、及び推定技術の検証結果を説明し、適用事例を紹介する。