ゼロ·エネルギー·マス·カスタム住宅（ゼムク）の国際的動向

摘要

「ZEMCH」（ゼムク）とは，現在の複雑な顧客の要求に対応すべく高品質でしかも低価格，更に環境に優しいゼロ·エネルギー住宅の供給を目的とした「Zero Energy Mass Custom Home」（ゼロ·エネルギー·マス·カスタム住宅）の略語である．ゼムクは，先進国及び後進国における環境，経済，社会的な側面を十分に考慮した持続可能な住宅及びコミュニティ開発を指針としている．1987年にUnited Nations（国際連合）の「World Commission on Environment and Development」（環境と開発に関する世界委員会）によって，「Sustainable Development」（持続可能な開発）の中心理念が紹介された．その一方，同年，スタンレー·デイビスによって「Mass Customisation」（マス·カスタマイゼーション）といった一見矛盾語と思われる画期的な概念が提案された．ゼムクは，これらの基本概念を基軸とし，2010年にスコットランドにあるグラスゴー美術学校を拠点に，ゼロ·エネルギー·マス·カスタム住宅に関する国際的な共同研究開発及び教育活動の推進を意図する「ZEMCH Network」（ゼムク·ネットワーク）と称した非営利団体が結成された．現在の会員数は645名，約40カ国に跨る大学，企業，政府機関からの参加者を迎え，世界的なゼムク共同研究開発の助長を促すテクニカル·ツアー，国際会議，ワークショップが定期的に行われている．以下に，ゼムクの国際的な動向として，当該ネットワークの教育活動及び研究開発の成果を紹介する．