梅産業におけるゼロエミッション化

摘要

和歌山県紀南地域では，健康志向を追い風に梅生産に拍車がかかり，全国の梅生産高の60％に相当する約7万トンが収穫され，そのうち約5万トンが梅干しに加工されており，農業を含めた梅干し産業が確立された．しかし，それによって剪定枝，梅酢，梅調味廃液が大量の廃棄物として排出されている．前者2つは農家から，後者は梅干し工場の産物である．梅園は4,800ヘクタールであり，そこで生じる勢定枝の量は約12,000トンである．これまでは剪走枝を梅園で野焼きし，その灰を梅園に戻していたが，野焼きの禁止によって，その有効利用の方策が課題となっている．梅酢は，5万トンの梅を塩漬けすることによって生じるが，その量は約12,500トンである．梅酢はショウガや塩紫蘇漬け，果汁などに70％利用され，30％が未利用となっている．農家では，塩漬けした梅を天日に干した白干しを生産するが，これは梅干し会社に引き取られて調味梅（低塩で甘みを加えたもの）や紫蘇漬けに姿を変える．調味梅の加工に使用した調味液の廃液が3番目の廃棄物であり，概算25,000トンであるが，すべて廃棄されている．後者2つの廃棄物は，廃棄物業者に19,000円／トンで引き取られ，処理されているが，まだロンドン条約が発効していないために，廃棄物業者によって海洋投棄されている．