超音波探傷試験における簡便·高精度な新しいき裂深さ測定法“SPOD法”の開発

摘要

再循環系配管に用いられているオーステナイト系ステンレス鋼の溶接金属は、炭素鋼やクロム合金鋼の溶接金属と異なり、不均質·弾性異方性を有するため、超音波の直進性や減衰などで検討すべき課題が多い。 このため、簡便で傷深さの測定精度が高いTOFD法を適用することが難しい場合があり、フェーズドアレイ探触子を用いた端部エコー法が有望視されている。 しかしながら、溶接金属からのエコーと区別して微弱な端部エコーを識別しなければならない傷深さ測定は、難易度が高く、検査員の技量に負うところが大きい。 著者らは、端部エコー法とTOFD法の課題を解決するために、斜角探触子により傷へ超音波を入射し、傷からの回折波を傷直上に配置した垂直探触子で受信する新しい深さ測定手法“SPOD法”を開発した。 本手法は、斜角探触子を用いた端部エコー法よりも深さ測定が簡便であり、TOFD法の適用が困難な厚肉のステンレス鋼製配管に適用することが可能である。 本稿では、文献(11)を要約し、開発した手法の原理および実証実験の結果について紹介する。 本手法の原理、実証試験における試験体、測定条件および測定結果の詳細は文献(11)を参照されたい。