建設用3Dプリンタ「T-3DP」の開発経緯と今後の展開

摘要

少子高齢化による技能労働者の離職や入職者の減少に伴い，建設業の担い手不足は年々深刻化している。また，働き方改革による長時間労働の是正や処遇改善のためにも，生産性向上は喫緊の課題である。国土交通省は，建設業の生産性や魅力向上を目指して1－Constructioドル施策を掲げ，現場への導入を推進している。コンクリート工事については，部材のプレキャスト化や規格の標準化，機械式継手の活用等が検討されており2），合理化による生産性向上が期待される。一方で，これらは従来の施工法の延長線上の発想であるともいえよう。コンクリート工事の生産性は過去30年間ほぼ変化しておらず，飛躍的に生産性を向上させるには，鉄筋，型枠，打込み，養生，脱型のサイクルからなる従来の施工プロセスを変える大胆な発想の転換がやがて必要になるのではないだろうか。しかも，設計，施工，維持管理においてデジタル技術が普及し，データの蓄積·連携·利活用をフレーム化したフロントローディングによるプロジェクトマネジメントが当然になる時代がそう遠からず訪れるであろう。未来を予測し，時代変化をチャンスに変える新たな技術開発に挑戦すべきではないか。これこそが開発の出発点であった。