液体の統計力学理論によるチャネルタンパクの透過現象解析

摘要

細胞を取り囲む細胞膜にはさまざまなチャネルが存在しており，これらチャネルによって細胞内外の物質の移動が調整されている．チャネルの物質透過は広義の「分子認識」過程と考えられる，分子認識過程には，それを特徴付ける二つの重要な要素がある．一つは認識過程における自由エネルギー変化，すなわち認識前後での自由エネルギー差である．この自由エネルギー差の符号が分子認識の平衡論を決定する．たとえば，イオンチャネルの内部にイオンが入る過程では，イオンがバルク中に存在する状態と，チャネル内部にある状態の自由エネルギー差がチャネル透過性を決定づける．もう一つの要素は構造揺らぎである．多くのチャネルに見られるゲート開閉はこの構造揺らぎに起因する．