ワイヤ放電加工における放電位置制御性の向上

摘要

放電加工において，放電点位置が加工特性に及ぼす影響は極めて大きい。 放電加工を安定して行うためには放電点位置を分散させることが本質的に重要である。 放電加工では，極間に電圧をパルス状に印加し，パルスの休止時間の間にプラズマを冷却することでプラズマの消沈を促進させ，次の放電は他の場所で生じるようにすることで放電の分散を図っている。この場合，次の放電点の決定は，極間の状態に依存し，人為的に制御することは困難とされた。 ところで，加工速度を向上させるには，休止時間を短くすることが効果的である。しかしながら，休止時間の設定を短くしすぎると，休止時間中に極間のプラズマが十分に消沈できないため，放電が集中してしまう。 このような放電の集中によって，集中箇所の温度は上昇し，プラズマの電離度は低下しにくい。 その上，加工屑の濃度も濃くなるため，放電の集中がさらに起こりやすい状態に陥る。 そこで，放電点の分散を意図した放電位置制御が可能であれば，休止時間を短くしても放電の偏在や集中の抑制が可能となる。 従って，休止時間の短縮によって加工速度の向上が図れる。また，偏在や集中の防止によってギャップ分布の均一化が図れ，加工精度が向上する。また，熱的ダメージの軽減によって加工面品質の改善も期待できる。 さらに，ワイヤ放電加工においてはワイヤの断線を防止することが可能となる。