カラーネガの絵画はゲーテの時代から

摘要

1980年頃に「ハイパーリアリズム」と呼ばれる新しい絵画表現が注目を集め，その一部にカラーネガの像を用いる手法が存在したことを記憶しています．また同じ時期に，カラー写真の作品やテレビドラマの特殊演出に，明暗と色相を反転させたカラーネガ表現が用いられていました．これらの手法はいつのまにか消えてしまったのですが，最近，カラーネガ像を表示した後に現れる色付いた残像の人気が高くなっています．歴史に興味を持っている私としては，この残像現象にゲーテの名前が引用されないことに大変不満です．『色彩論』は，ゲーテが約20年間打ち込hだ研究の成果を1810年に刊行したもので，各国語で出版がされていますが，私の蔵書の中で和文の4冊を取り出して並べてみました（Fig．1）．ドイツ語，英語の版もあるのですが，割愛します．