特集革新的な過酸化水素合成法の開発不可能とされた純過酸化水素水の直接合成

摘要

エネルギーの有効利用の観点から注目されている水素／酸素一燃料電池は，水素と酸素が反応して水を生成するときの自由エネルギー変化を電力に変換できる装置である。燃料電池反応の特徴は，水素と酸素を混合させることなく反応させる点にある。「混ぜないで反応させる」，ペテンのような話だが事実である。水素と酸素の混合，これほど危険な状態はない。燃料電池は，電解質膜で物理的に酸素分子と水素分子を隔てた状態で，水素分子がプロトンと電子に分解されて酸素側に供給されることで還元反応が進行する。さて視点を変えると，燃料電池反応は水素と酸素を混ぜることなく水を合成できる化学変換装置と見ることができる。水を合成しても誰も褒めてはくれないが，同素体である過酸化水素（H202）が直接合成できれば，その意味は極めて大きい1）。