漆喰と左官をより身近に、深く知ってほしい

摘要

近年、塗り壁の機能面が見直され、漆喰をはじめとする塗り壁の需要も高まってきていると感じている。自然素材である漆喰は強アルカリ性でカビの発生を抑え、消臭、調湿、抗菌効果など人が快適で健康に暮らしていける多機能を持った塗り壁材である。一方で、施工性·耐久性·コスト·メンテナンスといったところでは自然素材であるが故に扱い難い商品として認識されている面もある。確かに施工時においては、左官業者という塗り専門の手間が必要となり、一時的にはコストが掛かり、家の僅かな加重によって引き起こる入隅のクラックや、ぶつけた際の剥がれなどでメンテナンスも必要となってくる。しかし、コスト面では一時的な側面のみを考えるのではなく、20年·30年といった長期的な期間でのコストと安全面も含めて考えて欲しい。塩化ビニールなどの壁紙は、静電気により汚れが付着し、接着面の糊が劣化し剥れ、その度に貼り替えるコストが必要だが、漆喰には自硬性という特性がある。自硬性とは漆喰の成分である消石灰が二酸化炭素を吸収し、元の炭酸カルシウムに戻る漆喰の循環サイクルによって生まれる。漆喰は100年かけて石灰石に還る硬化性を持ち、塗り替える必要のない強固な壁となる。また、小さなクラックであれば自分たちの手で手軽に補修できるのも自然素材ならではの漆喰の魅力ではないだろうか。一般のユーザーに対して、漆喰の持つ様々な機能性やメリットだけでなく、その特性を正しく伝え、自然素材と長く付き合う暮らし方を発信していかなければならない。