新規カリウムイオン競合型アシッドブロッカー（P－CAB）ポノブラザンフマル酸塩の合成研究

摘要

かの夏目激石（1867－1916）の死因が，胃潰瘍からの大量出血であったことはよく知られていることである。その胃潰瘍をはじめとする酸関連疾患は，胃酸が関連し，一般的には胃酸分泌抑制により臨床的効果が得られる疾患群を指す。胃食道逆流症（gastroesophageal refluxdisease：GERD），あるいは非ステロイド性抗炎症薬（non－Steroidal anti－inaammatory drug：NSAID）連用による胃粘膜傷害なども胃酸分泌抑制により治療効果が得られるという点で共通している。これら酸関連疾患は原因や治療法が明確でなかった時代を含め，長年にわたり人類を苦しめてきた。淑石の代表作の1つ，「吾輩は猫である」に主人公として登場する苦沙弥先生も胃弱であることから，タカジアスターゼを消化剤として常備し服用していると描写されている。