制約下で日々の生活を営み，危機対応を考えて貫徹する仕事

摘要

2020年は，これまでになく「クルーズ船」に注目が集まった。曰本での新型コロナウイルスの感染の対応からである。そこで目の当たりにしたのは，次のような特殊性だった。豪華客船とはいえ「閉鎖空間」であること，「寄港」が簡単でないこと，非常事態の対応では陸上に比べて困難の多いことなどである。本書は，かつて労働科学研究所および海上労働科学研究所に在籍された大橋信夫先生が，1965年から1988年までに乗船調査した知見を一般の方にも読hでもらえるようにとまとめられたものだ。調査時期からすでに30年以上経つているものの新鮮さを感じてしまうのは，著者の「労働と生活」を全般的に俯瞰するという一貫した姿勢に裏打ちされた，その”働く人の傍ら”で描写されるリアル さによるものと思われた。