多様な正社員を求めて

摘要

一般には，「雇用形態の多様化」が自明の理とされている。 そしてそれがあたかも望ましいかのように言われている。 しかし，本当にそうであろうか。 私は，正社員という働き方こそ大切だと考える。 それにはいくつかの理由がある。 まず，個人からすれば，比較的安定した雇用と賃金，そして職業能力を積み重ねていく働き方を意味している。 それに比べれば，企業をわたり歩くような働き方は，少数のハイタレント人材を除けば，リスクが大きすぎる。 特に安定した生活を重視する人にとってはそうである。 また，企業にとっても，コア人材としての正社員の重要性は言うまでもない。 ただ，現在では「選択と集中」の中で，高コスト正社員が問題となっているにすぎない。 もっと言えば，国家にとっても正社員たちが仕事の中で形成するキャリアは貴重である。 人材こそは，資源に恵まれていないわが国の唯一の資源とも言えるからである。 正社員雇用に基づくキャリア形成を促進するしくみが必要である。 したがって，女性労働だけについて考えることには，あまり賛成できない。