溶接変形シミュレーションによる造船の高精度製作

摘要

船殻建造においては，その製造工程において切断，溶接，矯正などの熱加工により部材に熱が入るため変形が発生する。 これらの工程の中でもっとも変形を生じさせるのは溶接である。従来は変形対策として経験式により変形を予測し，伸ばし，のべ尺を与える方法がとられてきた。 しかし，経験式では構造が異なる施工方法が変わる等の場合には，その変形を予測することができなかった。 図1に示すように，溶接変形は横収縮，角変形，縦収縮に大別される。 また，造船における溶接継手は，すみ肉溶接，板継溶接がほとhどであり，溶接長さは20m を越えるものまである。 比較的単純で溶接長さの短い構造の溶接変形について検討された例はあるが，大型構造物の溶接変形について検討された例は少ない。 近年，コンピュータ技術の発達，IT化の浸透により溶接変形をシミュレーションすることで高精度に製作し，生産のコストダウンが図られるようになってきている。ここでは大型溶接構造物である造船における溶接変形を精度良く推定する手法を確立し，実船に適用した例について述べる。