事業者間格差が目立った都市ガス大手4社の25年3月期

摘要

東京，大阪，東邦，西部の4大手都市ガスはこのほど平成25年3月期決算（個別）を発表したが，4社揃って増収ながら経常で東京と大阪が増益，東邦と西部が減益と明暗を分けた。この間，東京と大阪，東邦と西部の間でもそれぞれ売上高や増益幅でかなりの差がみられ，ひと口に大手4社といっても格差が広がりつつある。従来は売上高や利益で前年度比横並びのケースが多かった都市ガス各社の年度末決算だが，近年は工業用大口における需要開拓の違いや原料の手当ての差，更には付帯事業への取り組みの違いなどで各社各様の決算が多くなっている。連結になると更にそれは顕著で，東邦や西部がそれほどでもないのに対して大阪など売上高が個別決算の2割以上を占めるまでになっている。そうした中での都市ガス大手4社の当期決算だが，前期に続いて輸入LNG価格の高腰が決算内容を大きく左右した。前期ほどの上昇率ではないもののこの1年のわが国の輸入LNG価格平均は全日本CIFで，昨年4月の7万256円／トンから今年3月は8万222円／トンへ14.2％も上昇した。その1年前が24.7％の値上がりだったから上昇率はいくらか緩和されたが，1トン当たりのLNG価格平均は8万円を超えたのだ。ちなみに，家庭用などにおける新「原料費調整制度」で適用される一昨年12月分と昨年12月分のLNG価格の比較を行うと6万6,706円／トンから7万3,723円／トンへやはり10.5％の上昇だった。この輸入LNG価格の高腰は，前期に続いての福島第一原発事故を契機とした電力各社でのLNG使用の増加による値上がりだけでなく，当期はアベノミクスによる円安の影響も加わっている。その影響は今年度も更に続くとみられ，状流によっては今年度の決算見通しは途中で修正を余儀なくされるかもしれない。