コージェネ3,000万kW達成は可能かあまりに低い都市ガスの「発射台」

摘要

昨年10月に日本ガス協会の鳥原会長（東京ガス会長）が，2030年に全国で天然ガスコージェネを3,000万kW普及させ，ガス空調も現在の2倍に引き上げると発表して業界内外を驚かせた。これまで都市ガス業界が好調過ぎるくらいに好調だったとはいえ，かなりハードルの高い不可能と思われる目標設定だと思われたからだ。そこでほ家庭用燃料電池を500万台まで普及させ，天然ガス自動車も全国で50万台に増加させるなどの目標も示された。その後，天然ガスコージェネについては経済産業省の基本問題委員会が「天然ガスシフト」策の中で同じ数字目標を示したことから鳥原会長の発言の裏付けが取れたが，それでも相当に難しい目標だ。というのは，この数年の都市ガスは家庭用はもちろh，商業用，その他用（病院·公共施設等）とも低迷しており，主力の工業用についても以前ほどの伸びではなくなっているからだ。都市ガス業界が好調過ぎるくらいに好調だったのは2008年秋のリーマン·ショック発生以前のことで，今もなおそうだと考えられているとしたらそれは過去の残像によるものでしかない。また，最近の工業用の伸びは東京ガスなど電力需要によるいわば純粋な工業用需要とはいえない分野が貢献している面もあり，決して工業用が以前ほどの伸びを示しているわけではない。ちなみに，天然ガスコージェネだが，日本ガス協会が発表した昨年3月末の統計では家庭用は燃料電池「エコウィル」の普及により累計で前年末比16.3％増と伸長したが，産業用は0.2％の伸びに止まり，業務用と合わせた天然ガスコージェネ全体の累計設置容量は1.0％増の453万2千kWに止まっている。はたして天然ガスコージェネ3,000万kWという100万kW級の原発30基分に相当する途方もない目標を今後10数年で達成できるのかどうか。もちろh，その目標達成のために天然ガスパイプラインの建設が今後予定されいるわけだが，本誌は鳥原会長の発表した目標達成は不可能だと断言したい。そして，過大な目標設定は天然ガスパイプライン建設で過剰な設備投資につながり，都市ガス業界自ら首を絞めることになりかねないと警告もしておきたい。