産業用の「天然ガスシフト」で特化が進むか今年の都市ガス業界

摘要

昨年の都市ガス業界は，各社苦しい事業経営の中で一定の明るい道筋がほのかにみえてきた1年だった。需要家の減少がみられ，なお工業用で1998年秋のリーマンショックの影響が根強く残っているものの，昨年6月に策定された新しい「エネルギー基本計画」で産業部門の「天然ガスシフト」が打ち出され，今後なお都市ガス業界は工業用を中心に生き延びていけそうなことが明らかになったからだ。この産業部門での「天然ガスシフト」は，本誌で何度も紹介しているように一昨年秋に民主党政権が誕生して地球温暖化問題に火が点き，2020年，2030年を目標に大幅なCO2削減を図っていこうとなったことが発端。新政権誕生時には，石油石炭と同じ化石燃料であるLNGもCO2削減に向けて悪玉扱いされるのではないかと都市ガス業界関係者は戦々恐々としていたが，産業部門でCO2削減を図っていくには同じ化石燃料ではあるものの重油よりLNGがマシ，と新しい「エネルギー基本計画」策定時に総合資源エネルギー調査会総合部会で判断されたようだ。これにより都市ガス業界は今後も何とか生き延びる道を与えられたといえるが，一方で今後各社は「天然ガスシフト」への対応が必要になってくるし，その過程で事業者の離合集散が考えられる。また，新規参入者との競争は更に熾烈を極めるだろうし，単価の安い工業用の伸びだけで今後事業連営がうまく行くとも思えない。そうした新しい局面に入ろうとしている都市ガス業界の2011年について本誌担当の記者二人に話し合ってもらった。