逆転発想思考による革新的リスク管理手法

摘要

日本の労働災害は近年漸減傾向にあり，特に死亡者数は昭和63年の2549名から平成16年の1585名（速報値）へ約4割近く減少している。 この背景には「企業内の安全管理教育の徹底努力」があったことは想像に難くない。 特に最近では，KYT（危険予知訓練）やKYK（危険予知活動）として現場の安全管理教育を推進している企業が多い。 しかしその一方で，原子力発電に関わるトラブルやプラント工場の爆発事故などはまだ記憶に新しいし，熟練した作業現場での転落事故等は依然として目につき，労働災害死亡者数もここ数年は1600名前後で頭打ち状態になっていることも事実である。 したがって，労務災害対策が今のままで十分であるとは決して言い切れない。 そこで本論文では，「KYT/KYKに象徴される従来の安全管理対策（基本的には過去に発生した事故の事例研究に基づく原因追及型アプローチ）」に加え，「リスク管理はリスクに対する認識力に依存する」という側面から，「リスクに対する感受性感覚（リスク·センシティブ·センス）」を向上させる革新的なリスク管理の方法論である「逆転発想思考によるリスク管理手法」について事例を交えて紹介することにしたい。