電子移動を伴う光レドック束触媒

摘要

ここ数年来，無尽蔵でクリーンなエネルギー源である太陽光の主要成分である可視光を利用した精密有機合成が注目されている．ルテニウムトリスビビリジル錯体［Ru（bpy)_3]~(2＋)（以後TB~(2+)と省略）とその誘導体は，可視部にMLCTに由来する強い吸収帯を待つために，可視光を利用する上で有用な光増感剤であり，その光化学的特性に関して詳細に研究されてきた．可視光を照射することによって高い反応性を有する光励起種TB~(2＋)が生成し，様々な消光剤と反応する．この高い反応性は，高い励起種の生成効率と，比較的長い励起寿命（～1mu sec）に起因すると考えられている．しかしながら，このようなTBの性質を利用して，合成的に有用な有機合成反応へと展開された例はごく限られている．