ミクロ経済をベースとしたマルチエージェント経済シミュレーションモデルの検討

摘要

本研究の目的は，マルチエージェントシミュレーションを用いて地域通貨としての減価通貨が経済に及ぼす影響を評価することである．本稿ではこの前段階として，減価通貨なしの法定通貨の経済シミュレーションモデルを作成した．このモデルは消費者，生産者，銀行で構成される．消費者は予算制約の下で効用最大化問題に基づいて需要関数を決定する．生産者は利潤最大化問題に基づいて供給関数を決定する．銀行は収入最大化問題に基づいて次期の利子率を決定する．これらの需要関数と供給関数から市場均衡価格を求める．また，消費者はトレンド予測機能を持ち，これまでの物価の傾向から現在の物価を予測し行動する．この経済モデルのシミュレーション結果では時間に対して利子率と物価が激しく増減した．複雑な実際の経済の再現性が見込めるが，増減が極端すぎるためモデルをさらに修正する必要がある．