野外におけるコウモリの超高周波音とその利用戦略

摘要

コウモリのエコーロケーションに関するこれまでの多くの研究は，高度に発達した聴覚機構を理解するために，主に人工環境下にて行われてきた。一方で，自然環境下における研究は，計測の難しさなどから，音声による種判別の研究など，放射超音波の特徴を調べる程度に留まっていた。2000年代に入った頃から計測技術が飛躍的に進歩し，野外における彼らのエコーロケーションについて様々な重要な知見が得られるようになってきた。本稿では，コウモリが放射する超高周波音についての概略を説明した上で，主に野外における音響利用について解説する。そして，近年の研究によって解明された彼らの高度な音響利用戦略について紹介する。なお，本稿では，コウモリがエコーロケーションのために用いる音声を超高周波音として定義しているが，そのほとhどがヒトの可聴帯域を大きく超えているため，本文中では超音波と置き換えて使用することとする。