生体系の水と有機物質のガラス状態－未知と可能性－1.新しいガラス状態，転移の見方と水のガラス化：1.3 ガラス転移と低エネルギー励起の実験研究

摘要

本特集に対してガラス物性の研究手法ということで依頼を受けたが，一口にガラスといっても，無機ガラス，低分子ガラス，高分子ガラス，金属ガラスなど様々な種類のガラスがあるし，それぞれのガラスの特徴にあった物性研究手法がある．たとえば，レンズに使うような無機ガラスでは屈折率などの光学的な測定，金属·半導体ガラスなら電気抵抗や磁性の測定，高分子ガラスなら粘弾性的な測定が重要であろう．それらのすべてを限られたページ数の中で網羅することは不可能なので，本稿ではすべてのガラスにおける普遍的な興味である「ガラス転移」と「低エネルギー励起」に焦点を絞りたい．また，実験手法としては，もっとも一般的である熱力学測定（特に熱容量測定）と誘電緩和測定，さらには筆者の専門やある中性子散乱測定を取り扱う．例として取り上げる物質は，できるだけ本特集の興味に近い低分子ガラスと高分子ガラスを中心としたい．