食品技術講座：電子レンジ－Microwave Oven－第6回 果たしてきた役割と未来像

摘要

ここ50年から100年の間に，日本人は人種が変わるほどの大きな変化を経験した．一汁一菜の粗末な食事から，世界の美味を享受できる時代へと食生活を一変させ，世界一の長寿をも手にしたのである．1935（昭和10）年，当時の日本人の平均寿命は男性47，女性50歳にすぎなかったが，1965年には68，73歳，1984年には74，80歳と世界一の長寿国となり，現在は男性78，女性85歳となっている．貧しい人々にとって豊かな生活とは，健康·美容·長寿·繁栄をもたらすものであり，豊富な生活物資を手に入れhがために懸命に働く近隣諸国の人々の姿に，かつての日本人の姿を重ねることができる．しかしながら，物質的な豊かさを別の角度から見ると，地球環境の悪化，食料自給率の低下，食生活の乱れ，肥満…など，膨張した生活のもたらす負の側面がみえてくる．産業革命以後，世界的な規模で進行した大量消費社会への移行は，『多大なる恩恵とあり余る課題』とを後世に残すことになったのである．食生活が著しく変貌する中で，電子レンジは「忙しい人々を応援する」などの正の役割と，「個食化を助長する」などの負の役割を演じ，食生活の変遷と密接に向き合ってきた．そこで，最終回では現在の食生活上の問題点を列挙し，電子レンジの果たしてきた用途と役割，今後の未来像に迫ってみたいと思っている．