卵化器としての成都イトーヨーカ堂

摘要

1994年頃、中国政府は自国の流通近代化のために、伊藤忠商事を通じてイトーヨーカ堂の中国進出を要請した。そのとき、当時としては特例といえる多店舗での全国展開と過半数の出資を可能にする権限も同時に付与した。この背景には、イトーヨーカ堂の中国進出を通じて、単品管理、豊富かつ合理的な品揃え、活気のある店舗作りという先進国の小売ノウハウを中国に導入しようとする意図があった。イトーヨーカ堂は要請に応えるため、1997年に成都で第1号店を開店させ、翌年には北京にも店をオープンさせた。第1号店の開店から今年（2017 年）で20周年となる。2017年1月現在、イトーヨーカ堂は中国において、成都に6店舗、眉山に1店舗、北京に3店舗の計10店舗で展開している。一時期、14店舗を有していたことや他の外資小売企業が数百店舗で展開していることに鑑みれば、決して順調とはいえない。