バイオマスプラスチックを用いた農業機械部品から農業資材へのリサイクル

摘要

現在，地球規模での温暖化ガスの増加や原油価格の高騰，将来における化石資源の枯渇が大きな社会問題となっている。このような中，環境負荷低減と資源循環利用を目的として，カーボンニュートラルかつ生産·利用·廃棄過程の化石エネルギ依存比率低減が可能な素材の研究開発が各方面で進められている（大島，2005；金子ら，2011）。しかしその多くは自動車や家電業界等の市場規模が大きい分野で進められており，農業機械·農業資材等の分野では実用化·普及段階に至っているものは少ない。開発されている様々な素材の中で，現時点では品質，性能，機能面，さらには材料としての入手しやすさの点を考慮すると，既存の石油系プラスチックを代替しうるものとしては，ポリ乳酸を主体とするバイオマスプラスチック（以下BP）が有力候補の一つと考えられる（望月，2009；富岡ら，2009）。著者らはポリ乳酸の資源循環の優位性に着目し，ポリ乳酸を主体とするBPを農業機械部材に使用した後，リサイクル農業資材として再利用することによって，農業分野における環境負荷低減と資源循環利用，及び資材回収の省力化を模索してきた（附木ら，2012）。本報告ではポリ乳酸を主体とする循環利用可能なBP による農業機械部品を試作し，ケミカルリサイクルによってポリ乳酸の再生を試みるとともに，再生ポリ乳酸から農業資材を成形した結果について報告する。