分子設計·材料設計·プロセス設計のためのデータ駆動型化学～材料設計·プロセス設計·品質管理と制御の連動

摘要

目的物性を持つ構造，材料候補を提案する-この逆解析こそが“データ駆動型化学”に求められる重要項目と理解され始めてきた.さらに「何を作るか」から，それを「どう作るか」すなわち材料そのものの開発から，その安定品質による生産のためのプロセス監視や制御までを含hだ課題に，いまやデータの集約的活用が不可欠となってきた.現在の我が国の素材·材料研究·開発分野は，産業の発展に大きく貢献するとともに，国際的にも優位な位置を堅持していると言われている.ただ，材料開発にはこれまで経験と勘に裏打ちされた実験的手法が中心的な役割を果たしてきたが，これがゆえに，新物質の発見から材料としての実用化（デバイスへの最適組み込みのための周辺技術の開発と最適化も含めて）には非常に長い時間と費用を要しているのも事実である.今後もグローバルレベルで産業競争力を発揮し続けるためには継続的に分野融合の創造的な取り組みが必要であるが，そのためにはこれまでの材料開発で蓄積された多くのデータ·情報を駆使し，材料開発にする時間と費用を合理的に短縮する環境整備が重要となってくる.化学におけるコンピュータ利用というとすぐに量子化学計算を連想する方々も多いと思う.しかし，量子化学計算は，与えた構造，材料への評価得意でも，逆に目的特性を持つ具体的な化学構造，材料候補を提示できる仕組み（逆解析）を本質的に持っていない.つまり順方向予測や解析はできても逆方向予測（逆解析）はできないのである.この背景を受けて，まさにこの逆方向予測（逆解析）こそがデータ駆動型化学に求められる重要項目の一つであると理解され始めてきたのである.