都市·臨海·港湾域の統合グリーンイノベーション

摘要

都市の環境は港湾の影響を受けており，また都市域の環境変化が臨海域や港湾に影響を及ぼしている．地理的に連続し，陸域，海域，河川や河口域，工場地帯や住宅地などの異なる各特性を活かして，多くの人々に関わる都市環境のよりよい将来像を考えることは非常に重要である．本課題では，都市に特徴的なヒートアイランド現象と近年発生頻度が増加していると指摘されている豪雨に着目する．近い将来の都市の高温化や豪雨への適応策として，実際に実現可能な時空間スケールで植樹や水辺に関連する施策を適応シナリオとして提示し，その適応策が定量的にどれほどの効果があるかが超高解像度の大気海洋結合モデル（Multi-Scale Simulator for the Geoenvironment：MSSG）シミュレーションにより評価可能になった．加えて，高解像度のシミュレーションに用いる下水管渠綱と河道綱を結合した内外水複合氾濫モデルを開発し，そのモデルを使用して，温暖化時における適応策シナリオがどれほどの効果を示すかをシミュレーションにより定量的に示すことができた．これらの成果や適応策シナリオについては，文献を参照していただきたい．本稿では，それらの成果のなかから特に重要な知見を紹介する．