データ市場：データ·AI·シミュレータ·人の連結場

摘要

データ市場とは，データの利活用により生み出される，あるいは期待される価値を取引する市場である．例えば，国内における過去の気象変化のデータは，ビールの総消費量の気象への依存を考える上で重要な意義を持つから，日本でビールを販売する業者やビアガーデンの経営者にとって大きな価値を持つ．一方，同じデータはパンの消費量に対してさほどの影響をもたらさないから，パンの販売者にとってはさほどの価値を持たない．この場合，このデータをビール業者は高い金を支払ってでも得ようとするから，データそのものに価値があるように見える．しかし，パン業者はこのデータに高い金を出さないのであるから，データそのものに固定の価値があると考えてデータの定価での取引を考えるのは難しい．むしろ，この気象データを用いて得られるビール売り上げの予測情報のほうにビール業者にとっての価値がある（パン売り上げの予測情報もパン業者にとって価値があるが気象データとは関係が薄い）のであり，データそのものの価値は金銭を尺度として定めることができないと考える方がデータにまつわる価値の説明は容易であり，市場に参加して金を実際に支払う人々にとっても納得できる説明となる．