食品の産地偽装防止に用いられる安定同位体比質量分析装置とその利用価値

摘要

日本食品工業倶楽部の主催により，我が国を代表する食品会社100社以上の経営層もしくは品質管理責任者に対し，安定同位体比質量分析法による食品の産地情報トレーサビリティ·産地判別·表示偽装防止技術について説明する機会が最近あった。近年の質量分析技術進化により，今まで成し得なかった食品の産地識別を科学的根拠に基づき実施できる先端装置環境が整いつつあることに企業のトップ·幹部が気づいたことから，これまで企業のガバナンス上で心配の種となっていた表示偽装された不正原料や産地偽装された輸入原料の意図しない混入を防止できる可能性を提案した。その結果，食品会社のほぼ全社が近い将来この装置システムを導入して原料受入や商品の品質管理に万全の体制を築きたいと発言されたことから，まだ創生期の先端技術ではあるが，非専門家のために本稿執筆を決意した。