食品衛生に関わる環境汚染物質の諸問題

摘要

今世紀における急速な経済発展によって，極めて膨大な種類の化学物質が製造·使用され環境汚染をもたらしてきた。 一方では，大量に製造された消費材等が，最終的に廃棄処理される過程でダイオキシン類等の有害な非意図的物資が発生し，環境汚染を引き起こした。 これらの中，環境ホルモン（正式名：外因性内分泌撹乱物質）および残留性有機汚染物質(Persistnt Organic Pollutants, POPs)と総称される物質群が国際的に注目されている。 環境ホルモンとは，「生体の恒常性，生殖，発生，あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成，貯蔵，分泌，体内輸送，結合，排泄などを阻害する外来性物質」と定義づけられている物質の総称である。 我々の身の回りには多くの環境ホルモンが存在し，その数は環境省や経済協力開発機構(OECD)では約70種類，学術論文に掲載されているものでは約140種類にもなるといわれている。 これらのものは，①農薬（除草剤，殺菌剤，有機塩素系殺虫剤，カルバメート系殺虫剤，有機リン系殺虫剤），②非意図的生成物，③プラスチック，プラスチックの原料·可塑剤，④医薬品，医薬品の原料，⑤工業用製品および（む天然物質の六つのカテゴリーに分類できるが．その大半は①の農薬である。