約40年前に腸管出血性大腸菌を国内で確認

摘要

腸管出血性大腸菌はベロトキシン（ベロ毒素／以下VT）を産生する大腸菌で，食中毒菌の中で一番怖がれている。そして腸管出血性大腸菌の中で一番知られているのが腸管出血性大腸菌O157（以下O157）である。O157食中毒で一番記憶が残っているのは，1996年7月に大阪府堺市学校給食で発生した集団食中毒である。この食中毒では患者数約8，000人，死亡者3人（その後1人死亡）で，堺市民に対する風評被害も発生し，大きな社会問題となった。その後も腸管出血性大腸菌による大きな食中毒が発生し死亡者が出ている。2011年には北陸地方を中心に発生したユッケによる腸管出血性大腸菌（O111·O157）食中毒では5人が死亡している。2012年に札幌市の漬物製造業で製造された白菜の浅漬けによるO157食中毒では8人が死亡している。腸管出血性大腸菌による発症機序が解明されていなかった約40 年前に，ベロ毒素産生性大腸菌による集団下痢症が国内で発生しているので紹介する。