連載講座：産業安全工学(11)－情報安全と社会の対応（情報セキュリティ)

摘要

産業社会においては，経営資源である「人」「物」「金」を投入して生産活動を行っているが現代においては，第4の経営資源として「情報」が挙げられている.また，市民活動においてもコミュニケーションや通勤·娯楽·医療·福祉·冠婚葬祭に至るまで情報ネットワークなしではもはや成り立たない状況である.つまり，社会活動は情報資源を基礎として成り立っており，生活の要素である「金」「健康」「勤労」も事故のない情報資源の円滑な運営があってこと安心感が得られる状況である.もし，情報資源の誤用や運用上のトラブルが生じれば社会全体が脅かされるようになる.社会には，多くの情報資産が存在しており，それらは，コンピュータ，記録媒体，紙，または人の記憶や知識など，さまざまな形態をとっている.ネットワークやIoTの普及に伴い，情報資産の価値は，ますます高まっているが，情報資源それ自体に判断能力はなく，悪意を持って使われれば社会の混乱にもなりかねず，「情報戦争」ともいわれるように国家間の生存をかけた競争に負けることがあれば，企業にとっても大きな打撃が現実となる.情報漏えいは，個人や組織の信用失墜，競争力喪失，機会損失，賠償責任といった重い負担にもつながる.そこで情報セキュリティは国を挙げての課題となっており，総務省からも国民向けに「国民のためのセキュリティーサイト」がネット上に公開されている.しかし，現在の社会においては情報安全という視点での取組みが未だ見られていないのも事実である.今回は社会安全と情報社会との関連について考える.なお，情報セキュリティに関する項目については，社会的なコンセンサスが重要と考え，省庁や情報関連企業の資料を引用する.