小説のあらすじ創作を支援するシステム～ユーザの創造性を高めるランダム文節生成機能の検討

摘要

物語は古くから思想や感情を構造化する道具として用いられてきた．今日ではそれら思想や感情を表現する形態は，小説や演劇，映画など様々ある．また物語には構造があると言われており，様々な研究者が物語の構造に関して研究をしている．古くはソビエト連邦の昔話研究家であるウラジーミル·プロップがロシアにおける魔法民話と呼ばれるジャンルの昔話を分析したことに始まる．プロップは民話を構成する最小単位として登場人物の行動を機能と定義し，民話の構造を機能の配列とした．その結果，魔法民話は同一のタイプの構造しかないことを発見した．その後も，様々な研究者によってジャンルごとに物語の構造が定義されてきた．例えば，ブレイク·スナイダーは脚本のテンプレートとしてブレイク·スナイダー·ビート·シートを定義し，これはハリウッド映画などでも多く活用されている．そして，民話やハリウッド映画の構造と同様に，小説というジャンルにおいても共通した要素や展開が存在している．近年では小説の創作現場において，前記のような物語の構造を取り込み，作家の構成力や想像力に委ねられていた物語作成手法を形式化することが試みられている．これは自らの作品に関するイメージを整理，構造化し，さらに可視化することでアイデアを創出するという新しい創造への試みである．