無線電信の誕生-電波伝播の檢証とマルコーニの実用化

摘要

18世紀末からの産業革命を推進したのは自然科学を利用した産業機械の導入であったが、その多くは僅かな科学知識を基に実業への利用を図った発明家の努力によるものであり、学問としての工学は実用化の段階での問題を究明しながら体系化されていった。 しかし、無線通信-電波の利用-という分野は、学問が先行した数少ない例である。 電磁界に急激な変動が生ずるとこれは波動として遠方に伝搬する。これが電波であり、これをElectric Waveと命名したのはヘルツである。 エルステッドによる電流の磁気作用の発見に触発され、ファラデイは電流と磁気の関係の究明に没頭し、一次コイルの電流の断続が絶縁された二次コイルに電流を発生することを発見し、また偏光した光の偏光面が磁界により回転することの発比から、光が電磁波（当時はエーテル波と称した）であると予言した。