転がり軸受の疲労：転がり軸受の寿命計算式

摘要

転がり軸受の寿命としては，音響寿命，焼付き寿命，転がり疲れ寿命などがある。 また，転がり軸受の様々な損傷形態，摩耗，かじり，スミアリング，割れ，欠け，圧痕，フレッテング，腐食，酸化，電食などによる故障も広義の軸受寿命と捉える事もできる。 しかしながら，ここで述べる軸受の寿命計算式とは，音響寿命·焼付き寿命·故障等の不具合は対象外として，転がり疲れ現象によって表面がうろこ状に剥がれ落ちるフレーキング寿命（以下，軸受寿命）を予測するものである。 フレーキングの事例を①に示す。 私が会社に入社した当時，今から四半世紀前には転がり疲れに疲労限度は存在しないと考えられていた。他方，回転曲げについては疲労限度の値が論じられ，現在とは全く異なる状況であった。 現在では両者の関係は逆転してしまい，転がり疲れに疲労限度が存在し，回転曲げにおいては従来の10{sup}7サイクルでは疲労限度が存在せず，10{sup}9サイクル（ギガサイクル）での疲労限度を考えねばならないという議論がなされている。 転がり疲れに疲労限度が存在するということは，軸受寿命に対し時間寿命だけでなく無限寿命も考えねばならないという事を示唆している。 転がり軸受は，汎用な用途に対し疲れ寿命が計算できる唯一の機械要素である。 上記の問題点をふまえ，寿命計算式の歴史を振り返りながら最近の転がり軸受の寿命計算式を紹介する。