鉱山開発と先住民--オーストラリアにおける一事例

摘要

オーストラリアは世界で有数の資源輸出国である。 全国各地で大規模な鉱山開発が進み，鉱工業は国の経済において重要な役割を果たしている。 鉱山は人口集中地から遠く離れた地域に位置しているのがほとhどであるが，これらの土地がオーストラリア先住民の所有であることが多い。 例えば，オーストラリア大陸中央の北側にあるノーザン·テリトリーでは，この準州内で操業している鉱山の50％が先住民アボリジニが所有している土地にある。 これらの土地は，かつてヨーロッパからの入植者たちが不毛と考え，アボリジニの居住地としてあてがったものである。 しかし，今やオーストラリアでの鉱山開発は，アボリジニとの関わりを抜きにして考えることはできないといっても過言ではない。 本稿では，巨大な資源採掘が行われている地域で暮らすアボリジニを事例として取り上げ，彼らの暮らしや，彼らと鉱山開発との関わりを考えることにする。 こうした事例を積み重ねることで，資源開発とそれに関わる開発する側と巻き込まれる地域住民の間に生じるべき率直な情報交換ともいえるリスクコミュニケーションのあり方を考えるための重要な資料を提供していくものと考えられる。